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【東京の居酒屋】武蔵関の「丸忠」は、俺の青春だった。せめてここだけは語らせてくれ。


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今回は、すこし表現を変えてエッセイ風に。 

 

 

_東京は、嫌いになってしまった。

 

そんなにいい思い出があったかと聞かれたら、

正直あまり思い出せない。

全てが、苦かった。

 

思い出も友人も全て捨てて、東京を離れた身だ。

いまさら何を語ろうが、一笑に消えてゆくだろう。

 

しかしそれでも、ここのことは書かねば気が済まない。

御年80歳を迎えるマスターに敬意を表すべく。

東京都練馬区武蔵関駅にある居酒屋、

「丸忠」(まるちゅう)は、間違いなく俺の青春だった_。

 

 

 

「酒場放浪記」にも出てきた、あの居酒屋は…

東京都の練馬区、最西端にある駅・武蔵関。

西武新宿線を使って、西武新宿駅から約20分で着く駅だ。

この駅下に広がる関町商店街の傍にこの居酒屋はある。

 

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【写真引用元】居酒屋/味よし、雰囲気よし、そしてセンベロ! 武蔵関 丸忠 | 腹一杯食べるであります!ぱーと2 ゲロロ小隊マルル一等兵 より

 

 

そう、ここだ。卒業する前に来たのが最後、1年振りに訪れた。

 

右も左もわからぬ1年坊主のとき、先輩に引き連れられて初めて知った丸忠。

「先輩に連れられて、それから後輩を連れて行くようになる。誰もが通る道だな」

某先輩がおっしゃった言葉が心に刻まれる。

 

それからというもの、同期で盛り合っては、後輩を連れてともに話したこの場所。

時には上京した友人をお接待したっけな。

俺たちの青春はここにもあったのだ。

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カウンター6席、テーブル3つの小さな居酒屋。

40年にわたって続いてきたのだと言う。

 

 

絶対に外せないのは「にんにくニラ玉」と「なすチー」だぞ!

 

何十年にもわたって先輩方が注文し、食べ続けてきた「にんにくニラ玉子焼」

醤油をぐるりと回して、満遍なく染み込ませるコツを今でも覚えている。

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「なすチーズ焼き」も忘れちゃいかん。

熱いのに注意せにゃいかんのだけど、ついついガッついて火傷をしていたなぁ…。

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冷やしトマトもこんなにも華やかだ。

フランス料理仕込みのマスターの腕前なり。

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お金のない僕らは必ずこの二つは注文しては、箸をつつきあった。

飯を食べ、顔を見上げれば、いつも店主・蓮田さんの顔があった。

僕らは敬意を込めて「マスター」と呼ぶ。 

 

まぁこのオヤジときたら、僕の顔を覚えているようで覚えてないような。

この日も「今日は最後の日だぞ」と強く念じながら、マスターの話に全力で耳を傾けた。

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「兄ちゃん、どこの大学だったけか?」

「あぁそうか中大か!〇〇くんの後輩だったべな!」

 

「兄ちゃん(ぼく)と来てたあのヒョロッとした彼…元気してるかよ?

……名前なんだったけな?ほら…」

 

_Oですか?

「そう! O君だったけな!」

 

 

ぼくもゲストハウスの宿主になって、「名前と顔を覚え続けることはかくも難しいことなのだな」と思うこの頃。

でも、マスターはなんだかんだ私のことを覚えてくださっている。

ほんのわずかながら、記憶に残っていることに感謝である。

 

 

そんなことを思いながら、サッポロビールを口にした。

ここの黒ラベルは不思議と軽快で、酸味があるのだ。

 

絶品の一皿一皿とともに飲むサッポロは、僕は格別だと思う。

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24歳、80歳と対談す。

思い起こせば、

店に来てはマスターは、耳にタコができるくらいに同じことを話していた。

「学業が本分たるもの、本は読みな!」

「政治家目指すのか。心理学は絶対必要だよ」

 

 ところがこのボンクラ頭の、僕ときたら。

マスターの話を聞いているようで、聞いていなかったのだと今更ながら後悔している。

当時を振り返っても、あの忠告は自分の血肉となっていなかったのだ。

 

始めのキャリアを苦労する形で始めているのだから。

けもの道から始まる社会。

そうして昨春、肩書きもないまっさらな世界に身を投じた。

 

"社会の荒波"へと投身しなかった学生時代を、激しく後悔している。

 

 

そんなことを思いながら、マスターに話を伺った_。

 

 

みんな本の知識が全てだと勘違いしてるから、社会に出てから「あ、俺の考えてたことと違う」てなことになっちゃうわけだよ。

 

だからそういうことをあんたたちにクドクド言ってんのによ、

「あのタコオヤジまた言ってるよw」ってほんで話聞いてないでさ(笑)

 

俺も若い頃もさ、

「な〜にバカなこと言ってだ」って馬鹿にしてたけどよ、兄ちゃんの今と同じだなぁって思うわけよ。

 

世の中のね大抵のさ、真っ暗な世界を進むためには、"懐中電灯"ってのが必要なわけだよ。

その"懐中電灯"が「予備知識」なんだよ。

 

そういうことをコウコウと言ってたんだけどよ、聞いてないってわけさ。ハハハ……

 

世の中「管理、管理!」って言うけれどよ、当の(管理と言う)本人はなんにも考えてないんだよな。管理された人間ってのはさ、進化しないんだよ兄ちゃん。

 

安住していた学生時代を激しく後悔。

南無惨。

 

 

大学進んだんだからな、

「テメェの生活だけで満足しているんだったら大学辞めれ!」ってよ。

社会に役立つ人材を育てる意義があるんだからさ…。そういうのを利己主義って言うんだよ。

 

この言葉で「恵まれた側の人間こそ、リスクを取り、社会に還元する責務がある」ということを思い出す。

 

 

「勉強の目的は、人生の目的は、知識でなく行動である!」ってよ。

学生なんだからさ、行動して失敗するわけだよ。あの時ダメだったなぁと反省する。

そんで、それを元にまた行動し直すのが大事なわけさ。知識だけあって行動しなきゃ何の意味もねぇんだよな。

だから人生の目的は知識でなくて行動なんだよなぁ。

 

……ちょっと兄ちゃん、あんまりツベコベ言ってごめんな(笑)

兄ちゃんが反省しているんだったら、行動起こさせないと意味がないってわけで、だからこれからが"勉強"なんだよな人生って!

 

 

…夢に、目的に一歩でも近づくように努力せないかんよ。

"運"てのがあるからさ、自分の思うようになんない場合ってあるんだな。

 

けど歳を取った時に、"悔い"が残らないんだよ。

「あぁ俺はこれだけのことをやった!」って最後に思える。

 

夢だけ見て「なんであの時やらなかったんだ!」って後悔しないようさ。

飯だけ食って寝て、本能だけで生きちゃあ駄目だよ。

 

 

……まぁ「あの時、焼き鳥屋のタコオヤジが言ってたな」って思い出してくれや(笑)

 

 

いざ発たん 武蔵野に置きし 残り香

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ここまで、わずか1時間たらず。

別件があったために名残惜しいが、マスターと握手とご挨拶を交わして店を発った。

 

この年齢になってからと言うもの「二度と逢うことがなくなる」経験を、痛いほどに体感してきた。親しくした人は突然にいなくなるものだ。

 

 

おそらく、これが最後かもしれないと思いながら1時間をいただいてきた。

稚拙ながらも文章として、この手で記録すること。

矮小ながらもこの世界に、一石を投じること。

 

ほんの僅かながらも、感謝と畏敬の念は感じていたが言葉にすることができなかった後悔。「吉田類の酒場放浪記」だけじゃ足りない、このお店への思いとともに。

 

この場を借りて「丸忠」への、マスターへの賛辞をお贈りしたつもりだ。

4年間の青春をありがとう。

 

マスター蓮田さん、いつまでもお元気で。

 

 

詳細情報

【営業時間】19:00~ 翌0:00

【定休日】木曜

【住所】東京都練馬区関町北4-1-3

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www.shingokataoka.com

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