スポーツの悩みの種「イップス」を知っていますか?
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興味深い本だったのでシェア。
スポーツにおける重要な壁「イップス」について。
有名選手も経験。ある日突然、誰にでも起こる?!
わずかな距離なのに送球できない、簡単なパターが打てない…突然思い通りのプレーができなくなる運動障害 "イップス"。その症例・症状・治療法を解説し、指導者・選手の不安や疑問を解消する。
非常にためになったので、個人メモのついでにレビューします。
筆者の石原氏自ら、イップス脳症状に悩んだからこそ
この本を書いた石原 心さんは高校時代・投手の頃にイップスを発症。
数10メートルの微妙な距離を投げるのに苦労した経験から、早稲田大学で研究を重ね、スポーツトレーナーの道を志した方です。
過去には野球・キューバ代表のメンタルトレーナーも務めておりました。
【イップスの定義】とは?
さて本題の「イップス (yips) 」とは、どういった症状を指すのでしょうか?
文中の言葉で表現すると、
「自動化されたはずの運動に対して、脳が過剰な運動調節を加えることで起こる動作の遂行障害」
という心理的症状となります。
意味を噛みくだいて言うと、
「何も考えずにできていた動きが、うまく出来るように頭で考えて調節しながら動かすようになり、かえって出来なくなっている状態」
という状態です。
__例えば、僕らは足元をじっと見なくても、「歩く」「走る」「自転車に乗って漕ぐ」ことができますよね。
これらの動きは、普段している運動(動作)が、自分の体に染み付いているからこそできるようになっているはず。
この時いちいち「俺は歩いてる!」「走ってる!」「自転車こいでる!」なんて意識しながら動いてはいるわけではないはず。
無意識の状態です。
つまり「なんの意識もせずに動作ができること」
これが、”動作が熟練している”状態と言えます__。
※なお、イップスは競技レベル(うまい、下手)に関係ないこと、
レベルの差ではないことを補足しておきます。
では、野球から例にとって「相手の構えたグローブにピッタリ、ボールを投げる」という動作を例に取ってみましょう。
実をいうと、この動作は「かなり熟練した動作している」状態なんですよ。
「いや普通でしょ…当たり前じゃん」と思えますが、これはすごいことなんです。
投げる動作を細分化すると、
「投げる動作」=
「"振り被る"という、反動をつける動き」
+「右から左への、体重移動 (左投の場合は、左から右)」
+「自分の持っているボールを見ずに、相手のグローブへとボールを投げる動作」
【画像引用元】:baseball-laboratory.com
この一連の動きでいちいち「ボールがどこにあるか?」 だとか「足の位置はどこか?」
なんて見てませんよね。
この一連の動きが全て自動化され、スムーズに流れるように動けるようになっているというわけです。
でも、これが何万人が見ているとしたら、あなたはいつも通りに動けますか…?
これが、プレッシャーのかかる場面に直面して、
「あれ?この動作ってこうするんだよな?」
と、普段できていたことに心理的にブレーキが掛かった状態になります。
石原氏はこの本の中で、イップスをこのように表現しています。
「イップスは、ただ任せるだけでよかった、任せていたからこそ実現していたオートマチック運動を、急に同じスピード、同じ軌道でマニュアル運動しようとするようなものです」
この「熟練していた動作が(心理的ブレーキ、もしくは意識的に動きを調節せざるを得なくなって)自然にできなくなった状態」に陥ることを、イップスと定義できます。
”イップス”症状の特徴って?
①身体の故障・不調がないケースが多い
②目の前の状況を「失敗してはいけない」と認識した状況で発症しやすい
③緊迫度が低い状態では起きづらい。
④「力加減の調節」が必要な運動・ケースで起きやすい
①身体の故障・不調がないケースが多い
②目の前の状況を「失敗してはいけない」と認識した状況で発症しやすい
イップスが起きる原因として、
1.一度失敗した経験のあるケース・状況で、その記憶がよみがえる(フラッシュバックする)
2.これまでの経験以上にプレッシャーのかかる場面に身を置き、「失敗してはいけない」と認識する
二点のような流れによって、イップスが起こりやすいのです。
精神的なプレッシャーによって、心理的にブレーキがかかった状態ということですね。
③緊迫度が低い状態では起きづらい。
比較的リラックスした状態であれば、イップスの症状は起きないそうです。
逆に、
・緊張度の上がる相手・場面で発症してしまう(オンリーパターン)
もしくは、
・状況、相手に関わらずイップスが起こるパターン(オールパターン)
のケースがあることを念頭に置きましょう。
④「力加減の調節」が必要な運動・ケースで起きやすい
ほんの10%程度の力しか必要のないケースや、100%の力で動作をするケースよりも、
30~70%程度の微妙なさじ加減が必要な運動で起きやすいのです。
メンタリズムを知っておいて損はないよ。
この本についてはスポーツ(競技)において書いてきましたが、僕らの日常生活や仕事でも近い症状が起こり得るわけです。
例えば、
「あの時のプレゼンで失敗して、大勢の前で声が出なくなった…」とか、「左折した時に交通事故を起こしてしまって、左を曲がる時に急ブレーキをかけてしまう…」などなど、広い意味でのイップスは、日常生活でもあるのです。
(上記の例はあくまでパッと思いついた程度ですが)
本著からの抜粋ですが、
人と一緒に食事する時に手が震える
人前で文字を書く時に緊張する (いわゆる「書痙」という症状)
も広義のイップス、臨床医学的に言えば「突発性ジストニア」という状態に似ているのだそうで。
なにが起因になって普段できていたことが難しくなるか、
イップスと呼ばれるモノゴトはどんな症状なのか、前もって知っているだけでも自分でコントロールできる範囲が広がると思うのです。
*イップスの症状例は、元プロ野球選手の体験記もあります。ご参考までに。
・【イップスの深層】先輩の舌打ちから始まった、ガンちゃんの制御不能|プロ野球| スポルティーバ 公式サイト
知は力なり。
心理コントロールできるよう、イップスについて深読みするならこの本を導入にすると初めの理解が深まるはずです。スポーツに携わる皆さんはご一読を〜。
他の参照書籍もどうぞ。