栗山英樹はどんな理由で「有能な名将」という評価をされているのか?
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どうも、片岡(@KT_Okey)です。
10年来応援している北海道日本ハムファイターズが、だいたい毎年のように優勝争いに絡んでいて嬉しい限りです。
前回、この記事で栗山英樹監督の人柄について書きました。
今回は「栗山監督 名将」「栗山監督 采配」と調べて、監督としての度量を調べる人が多いようです。
主観的ではありますが、栗山英樹の采配について書き記します。
監督の独特な哲学や、方針を感じ取っていただけたら嬉しいなと思っています。
- 【前提】ファイターズのチームカラー:若い人材を早いサイクルで育てる、やりくり上手
- ①先入観なし:長所が生かし得るならば、試す限り試す
- ② "走る"は全ての原点
- ③選手のプレーに品評はなし:責任は全て俺にあり
- ④選手のためになるか?個人の成長のために奇想天外な起用もする
- あとがき
【前提】ファイターズのチームカラー:若い人材を早いサイクルで育てる、やりくり上手
基本的には、積極的なトレードを仕掛け、FA*1による退団は拒まない(勿論、重要な選手は残ってもらうよう交渉はするが)風土を持つチームです。
年齢の若い選手が出場しやすく、同時に高齢化した選手は他球団へと移りやすい、選手の流動性の高いチームです。
その流れは、2004年に導入した「ベースボールオペレーションシステム(BOS)」と呼ばれるITシステムの導入によってさらに加速し、一勝あたりにかかる平均年棒(コスト)が最も安いチームという好評価を受けます。
そのため、他球団が敬遠しがちな特徴・スキャンダルを持った選手であっても臆せずに積極的に交渉するチームでもあります。
事実、過去の実績としてかつて「練習嫌い」で悪評が立っていたダルビッシュ有投手(現:テキサス・レンジャーズ)、白村明弘投手を主力選手にまで成長させました。
スキャンダルで日本野球界に進むことができなかった多田野数人投手(現:石川ミリオンスターズ)や、立ち位置を追われていた二岡智宏選手(2013年引退、現:読売ジャイアンツコーチ)を獲得し、優勝の原動力へと繋げることに成功しました。
このように、日本ハムは「失敗・社会的制裁に対しても寛容な、チャンスを与える風土」を活用しているとも言えます。
この前提条件をもとに、栗山監督の采配をまとめてみます。
①先入観なし:長所が生かし得るならば、試す限り試す
先に記述した通り、日本ハムのチーム事情・特色も相伴って、実力相応の若手選手を積極的に起用する風土があります。
その選手の長所の一つが生かせるのであれば、たとえ正規のポジションでなくとも機会を与えます。
例えば2014年に、捕手で起用していた近藤健介選手を、怪我人の出たポジション(三塁手)に起用し、近藤選手の成長と、4位以下だと予想されたチームを3位に導く原動力となったのです。
同様に、投手についても、
先発投手(スターター)起用が中心の吉川光夫、斎藤佑樹、アンソニー・バースら各投手を中継ぎ・抑えに。守護神(クローザー)の増井浩俊を先発転向させ復活のきっかけを作っています。
↑ 大谷翔平投手(左)と近藤健介選手(右) 特に近藤は本職の捕手だけでなく三塁、右翼と慣れない(?)ポジションであっても経験を積ませた。翌年、リーグで第3位の打率(.326)を残した。
レギュラーがケガするのはすごく痛い。でも、違う選手がチャンスを得られる可能性がある。そこで成長すれば、レギュラーが戻ってきたときにはプラスアルファが生まれている。
② "走る"は全ての原点
様々なスポーツでも、必ず一つは「全ての原点となる動き」があります。卓球・テニスなら"打つ" サッカーなら蹴る…。
では野球は何でしょうか。それは"走る"という行為です。
野球は点数を相手より上回れば勝利というゲームです。点数を取るためには何が必要でしょうか。打つ投げるというよりも、"走る"という動きがウェイトを占めるのです。
栗山監督が就いてからはこの"走る"ということを常に意識付けています。
「打ったらすぐに走る」「どんな打球であれ常に全力疾走」…
コーチと選手の三者関係で、その姿勢を常に保つように心がけているのです。
例えばこの場面。
ライナー性の打球を相手の左翼手がファンブル。一塁ベースを蹴ったところで1度スピードを緩めたが、打球処理が遅れているのを確認すると再加速した。最後は二塁ベースへ勢いよく滑り込む。
「普通にファンブルしていたので」と淡々と振り返った大谷。それでも、栗山監督の反応は違った。
「あの辺は翔平らしいよね。(野手の動きを)よく見ているし、あの辺で足がポッと前に出るセンスがあるよね」
相手のミスを見抜く。言い換えるなら"隙をつく"
これはチームの中に"原則"を共有させ、念頭に置くことでできる技です。
原則を常に共有すること、忘れないこと。
この徹底さに、強さがあるのだと実感しています。
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③選手のプレーに品評はなし:責任は全て俺にあり
トップレベルの戦いであるプロ野球。連勝するどころか、負け続けてしまうことも十分にあり得るわけです。
敗戦した試合のあとで、栗山監督の発言でよく聞かれるものが一つあります。
それは「俺が悪い」というコメントです。
この「俺が悪い」という言葉には、今日の敗戦や選手のミスは、全て自分の責任だという意味が込められています。
つまり、選手個人が積極的に考え、判断したプレーは責めるべきものではなく、またコーチの判断も含めて最終的な責任は全て監督が負うという価値観に基づいています。
監督の役割は「責任を取ること」彼の著書でも再三述べられており、自ら定義していることです。
人を成長させることに主眼を置かれている彼だからこそ、一時の感情にそのまま流されず忍耐をし得ることができるのでしょう。その姿はやはり先生のようです。
選手を試合で起用するときには、僕はその選手を全面的に信じています。コーチは、選手の実力や状態を冷静に評価できないとダメですが、首脳陣のなかで僕ぐらいは、選手を信じてあげようと思っています。
ー栗山監督の名言ーより引用
④選手のためになるか?個人の成長のために奇想天外な起用もする
人を見出し、成長させること。これはどのような組織・チームでも不可欠な要素です。
栗山監督が発する言葉、行動の基準には、
「選手のためになるか?」
ということを、プリンシプル(原理原則)に据えています。
長所を引き出すには、別のアプローチも加えられたらこの選手は確実に伸びる!
そうした確信のもとで、栗山監督は声を掛け、選択・決断をするのです。
3人の例を挙げると……
増井浩俊投手:
2016年、立て続けに抑えとして失敗しているなか、夏頃に「先発起用」に転換。7勝1敗 防御率1点代という成績で日本一に導く。翌年に抑えに戻る。
大田泰示選手:
2016年に巨人より移籍。コーチ主導でフォーム修正成功、レギュラーに定着。
(2017年 打率 .256 15 HR 46打点)
2018年より2番打者として、.272 13HR 47打点 (2018年7月9日時点) の好成績。
この大田の2番起用は、栗山英樹監督が名将・三原脩を尊敬し、彼の提唱した「流線形打線」の象徴である「強打の2番」をモデルにしているからだとも言われる。今季初めて大田を「2番」で起用した時も、「どこの打順を打ったとしても泰示らしくやってくれ」と、大田の強打を前提としていることをうかがわせた。
その上で、栗山監督が選手起用で大切にしていることが、「どうしたらその選手が一番輝くか」ということ。そしてその極意が、立場を与えて「気付かせる」という手法なのだ。
・有原航平投手:
2018年、4~5月はエース格先発ながら防御率6点代と不振。6月に3試合「抑え」として登板。7月に再び先発に戻り、7月9日ソフトバンク戦で「7回85球1失点」の好投で勝利投手に。
この間に、有原自身があるキッカケをつかんだ。「真っ直ぐの大事さが分かった。カットボールに頼るのではなく、真っ直ぐをしっかり投げてこそカットボールが生きてくる」。
変化球を生かすための、ストレートの重要性に気付かされた。さらにはヒーロインタビューでは「中継ぎの大変さ、ゲームに入る大変さもわかりました。すごく勉強になった」とも語った。
【転載元】日本ハム有原、復活の白星 リリーフ経験経て「真っ直ぐの大事さ分かった」 | Full-count | フルカウント
あとがき
ここまで栗山監督の起用方法やその理由について述べてきました。
一見ウルトラCを、奇策を用いる監督と見られがちですが、その起用方法には「チームの成長」と「個の成長」の両方を実現させたいという狙いや思いが感じられます。
「この選手はこんなもんじゃない…」
「この方法なら、選手はもっといい気づきが感じ取れるかもしれないぞ…!」
選手とともに、汗をかく監督・栗山英樹。
その奥底にある意図を、感じ取って見てほしいと強く願っております。
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