高知市・帯屋町の喫茶「ラ・メール」で昭和モダンと珈琲を。_あぁ、ずっと浸っていたい場所だ。_
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_形あるものは、いつしか古くなり、いつか廃れてゆく運命にある_。
これは古今東西、どの世界を見ても真理であろう。
いつしか愛したお店は、いつか何かしらの原因で消えてゆく。
そうやって、地平線の彼方へと、二度と目にすることはなくなる時が来るのだ。
今回取り上げるお店も、いつかはそうなるのかもしれない。
だけども「永遠に、ずっと残っていてほしい_」
そう思える喫茶店だったので、ここに記述させていただこう。
「ラ・メール」…そこは、帯屋町に50年以上根付いてきた喫茶店。
高知市の中心部・帯屋町(おびやまち)。
ここは、17世紀の豪商・帯屋勘助(おびや かんすけ)の名から取られ、有力家老の住む町としてその名前を残してきた。
周辺には、市民図書館にアーケードを有する「商業・文化の中心地」だ。
この一角に、今回の舞台「ラ・メール」がある。
どうやら休養のため、2017年は2月いっぱい休みだったようで、この3月15日に念願の初入店となった。
1960年代のような、ポストモダン時代を彷彿とさせる雰囲気が。
「いらっしゃいませ。」
老夫婦だろうか、
カウンター席には年長の婦人が。
そこに面した厨房には、マスターが出迎える。
_焦茶の木壁に、深いえんじ色のスタンド・椅子。
そして壁に掛かっているのは、陶磁の皿にオブジェ…。
1960年代のポストモダンを彷彿とさせる雰囲気が、そこには残っていた。
メニューを開く。
目に着くのは、独特の字体だ。
少し崩された形に惑わされるよう、メニューに見入ってゆく。
どうやらトーストがメインのようだ。
ふとメニューの最後を開くと、
"あんぱん マスカルポーネにのせて"
という字に目は、運ばれた。
あんぱん…ふむ、そんな手の込んだ丸いパンまで作っているのか。
"マスカルポーネ"という謎のナマエに惹かれて、注文する。
一皿のアートのような「あんぱん」と、コーヒーを。
待つこと5~6分、
「"マスカルポーネ あんぱんにのせて" が運ばれてきた。
ふむ…?
我々が思うあんぱんではなかった。
見た目は、トーストなり。
予想外のモノ・コトと出会うことによって、いつの間にか自らの中に集められた偏見を解き崩す。
そう、これ"も"あんぱんなのだ。
ちなみに、「ラ・メール」とはフランス語であり、
「海(sea)」の意味を持っている。
パンは大地、小倉あんは土壌、抹茶の粉は草原だろうか。
そうすると、ミントは樹木となる?
なんだか、一皿の芸術にも見えて来た。
巨人の手で大地を崩し、ひとかけらずつ、口へと運んで行く。
小倉あんの甘さが強く、食べ応えのあるトーストだ。
往年のジャズナンバーが流れゆく中で、
1時間ぽっちりで移り変わるお客さんたち。
小洒落た人、友達同士の奥様方ご一行、長年足を運んできた老年世代たち…。
コーヒーをすすりながら、音の流れとともに時間を過ごす_
現代的で洗練された、尖ったカフェもいいけど。
こんな風に、時代が置いてかれたような場所と出会うことができた。
なぜ、生まれる前のモノが好きなの?と聞かれ続けて。
例えば、「彼のことが好きだ。ずっと聴き続けている」と僕が言ったとしよう。
当然ながら24歳の僕は、20,30代に芽が出始めた頃の小田さんを目にしたわけではない。
(DVDがあるじゃないかという野暮ったい反論はさておき)
そうすると、大抵「あら、古いのね」という趣旨のコメントが返ってくる。
別に良いか悪いかは別としてね。
母の影響か、それとも父の影響か。
僕の中に、古き懐かしい、琴線に触れるような雰囲気・文脈を欲しているのだ。
だからここを「懐かしい」「ヨイモノ」と感じるのだ。
1960年代経験したことはないけれど、"古き良きあの時代"を探して。
そうして、ポストモダン香る「ラ・メール」と出会った。
「あぁこの亜空間よ、永遠に残っていてほしい!」という儚き願いを込めて、僕はもう直ぐキーボードから手を止める__。
高知県の喫茶風土から生まれ、50年の時を経て残る「ラ・メール」へ。
ぜひ高知市にお越しの際はひとつ行かれては、いかがでしょうか。
店舗情報
・住所
高知県高知市帯屋町1-14-18 【Google MAP】
・営業時間
10:00~17:00(定休日:火曜日)
(どうやら営業時間が短くなったようです。)
・食べログ
【追伸】
調べてみたら「マスカルポーネ」は、クリームチーズの一種でした。
いやはや無知だったなぁと思いつつも、柔らかな風味だった気がします。
正直、小倉あんが強すぎたのでマスカルポーネの味がしたかどうか怪しいところ…?
ぜひ、ビビッときた一品を召し上がってください。
高知のカフェ・モーニング特集はこちら。
*1:よく見ると、少し年季が入っていた