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日本ハムのファンとしては、"優勝した"という夢にずっと浸っていたくない。


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先月の夏の高校野球からすでに一ヶ月が経っていた。ちょうど先月のいま、準優勝おめでとう!のムード一色だった頃だ。私もその雄姿をこのパソコン越しに観ていた頃だろうか。

 

ふと(下記の)白井一幸コーチの書籍を読んで振り返ったことがあったので、北海道の野球のことを書き連ねようと思った次第だ。

 この本について言及しておくと、"強豪"と呼ばれる、いまの北海道日本ハムの原型を築いたのがこの白井一幸氏だ。

氏は東京時代からコーチとして携わっていたが、その時の日本ハムは到底・優勝できそうには見えなかった。そのチームが彼とトレイ・ヒルマン監督の二人三脚で、さらに新庄剛志ら新たなエネルギーによって、25年振りの優勝を叶えたのだった。

 

前年には、駒大苫小牧の2度の優勝もあった。あの頃から、北海道の野球は明らかに進化の兆しを見せていた。

氏は2014年に日本ハムに戻ってきている。今年は久々の好機なり。

 

思えば、アマチュアも含めて北海道がこんなに野球で熱くなるとは思わなかったなぁ…

 

はじめに

この記事は、私「北のウォーリー」こと片岡慎悟のコラムです。

10年来日本ハムを応援し、プレー歴15年を数える私の観点から書きます。

もし興味が出てきたら右の記事も見ていただけると嬉しいです!

 

 

プロ野球だけでなく、アマチュア野球界も、北海道の時代が到来。

昨年2015年の春は、東海大学附属第四(現:東海大学札幌)高校が、

今夏は北海高校が甲子園決勝までたどり着いた。

 

いずれのチームも、12年前に移転し10年前に日本一に輝いた北海道日本ハムファイターズのように粘り強く、勝負どころに強いようないいチームだった。

 

読者の印象にまだ残っている、北海高校のことを振り返ってみようではないか。あれは確かに予想外だった。だが、その軌跡は駒大苫小牧の奇跡に並ぶ、素晴らしいものだった。

 

今期の北海高校の前評判:1,2回勝てたら御の字

そもそも北海高校の下馬評は低かった。

全国4000校の中で最多の出場回数記録を更新したものの、せいぜい1~2回勝てたらいいね、くらいの評価だった。私もそう思ったし、掲示板の評価もそんなものだった。

 

迎えた初戦、2回戦の松山聖陵(愛媛)戦は18残塁の拙攻、最終的に2-1のサヨナラゲーム。

これは不思議だぞ?と感じた。まず、いい選手に回っているはずなのにチャンスに弱い。流れが相手に行ってしまったか…?と思いきや主導権は渡さない。

凌いでしまうのだ。エラーが少ない。綺麗にアウトを二つも稼いでしまうのだ。

 

 3回戦の日南学園(宮崎)戦は併殺打を叩くこと3回。1イニング2安打しながら得点できないもどかしさ。それでもようやく手にしたチャンスをものにして粘り勝ち。

 

さらに優勝候補に挙げられる準々決勝の聖光学院高校をも抑えてしまった。

ここで確信した。「このチームは予想以上に"できている"チームだぞ…!」

 

スポーツ誌のNumberの取材にて、主砲の川村選手と、平川監督はこう答えていた。

「相手に点を獲られたから、こっちが得点を獲ったからと浮き沈みしないで、試合をやっていくことが大事だと思います。(中略)チーム内で我慢して戦っているという意識は強いです」川村選手

 

「野球は1回から9回まであるので、一喜一憂することなく、最終的にゲームで勝って喜び、嬉しさを感じなさいと言っています。1つのプレーで一喜一憂してしまうと、それが油断、勘違いにつながってミスをして、34点という失点となってしまう。

 そこを、4点を3点、3点を2点という風に抑えられれば、中盤から終盤に23回チャンスが来ると思うので、その時に畳みかけるようにと考えています。(略)」平川監督

 

その言葉からも分かるとおり、明らかに熟練したチームだった。

ミスしたら次に切り替える。次で巻き返そう。次に備えよう。勝機は必ず来る

この忍耐は、まさに栗山英樹監督そのものではなかろうか。

 

信じて、耐える。分かっていようがそうそう出来るものではない。

 

 

粘り強く相手の攻勢をしのぎ、相手との根比べ。そして、相手が根負け仕掛けたところで一気にひっくり返す。

どこか、今年の日本ハムを見るような強さを感じた。

 

そして迎えた準決勝。プロ野球チームも注目する、熊本・秀岳館を迎え撃つ。

「このチームなら、抑えられるぞ…!」

 

その予感どおり、得体揃いの秀岳館打線を3点に抑え込み、勝利した。

昨夏、大会いちばん最初の試合でミスを連発し、最終的に18点をも奪われた雪辱は、見事に晴らしたのだった。

 

夏の大黒柱・大西に負担を強いてしまったが…

特に獅子奮迅の活躍を見せたは、間違いなく大西投手だ。

準決勝までの4試合、36イニングを投げ抜き、その格好よさで夏のヒーローに躍り出た。下位打線のポイントゲッターとしても活躍し、文字通り大黒柱の活躍だった。

 

ただ、代わりになる投手がいなかったのは酷だったかもしれないが…。

決勝にまで上り詰め、フィジカルエリート達が集う作新学院との頂上決戦になったわけだが、結果は1-7の敗戦。それでも全5試合、大西投手がほぼ1人で投げ続けていたから何も文句なし。勝負にたらればはナシとはよく言ったものですが、もし作新相手に1~2点で抑えていたらどんな結果だっただろうか。優勝に届いていた?いやそれとも…

 

試合後の報道局の取材を通じて大西投手は「痛み止めを打って投げていた」ことを告白した。流石に松坂大輔投手や安楽智大投手のようなビッグネーム、150kmを連発するようなタイプではなかったためか、一大オピニオンとして提起はされなかったが、一人に託すしかないチーム事情を抱えるチームはこれからも出てきてしまうのではなかろうか。

 

一人の投手が投げ込み過ぎで潰れてしまうことはしばしばある話だ。彼も今後まだまだプレーできることを願いたい。

 

特性を持った選手がさらに起用されるようになり、選手一人にかかる負担が減らせるか。これ、今後の課題なり。いい選手が、長く怪我に悩まされることはあって欲しくないが、これは今後どう変わるだろうか。

 

 

大きな背中を見て育ち、自己を見つめられる選手たちだった。

Numberの記事に戻ろう。

主将でもある、大西投手のコメントが印象的だ。

「僕は相手打者を抑えて、ガッツポーズや雄たけびをしないです。野球は相手があって成立するスポーツですから、相手を敬うことを大事にしたいです」

大西投手のコメント

 

 その言葉から、「相手を敬うことだけでなく”自らを見つめられる”投手だな」と感じた。ピンチに追い込まれても相手打者を見透かしたように外へのスライダーへ投じる。かと思えば厳しい内角へ直球を投げ込み併殺で持ちこたえる。

 うーん、この肝の座り方は大したものだ。プロとしても、素晴らしい指導者にも、何にでもなれるような素晴らしいひとであることは間違いない。

 

さしずめ、かつての武田久投手や斎藤佑樹投手を彷彿とさせる粘り強さと言えようか。

 

 

 加えて、その大西投手を支えた、佐藤捕手の瞬時の判断はその好投劇を支えた。

強打で鳴らした聖光、秀岳館打線を抑え込む、見事な指揮だったと言えよう。

 

プロ野球の試合を観て、投手がどんな球種を投げるのかを見るようにしています。捕手で目指しているのは日本ハム大野奨太さんです。

プロの選手をこういうのもおかしいですが、大野さんは打者が予想をしていない球を投げさせていて、すごいリードだなとずっと思っていました。そういうのを見ていたから、瞬時の判断に役立ったのかもしれません」

佐藤捕手のコメント

 

いま、北海道の野球は、確かに花開いている。

三度目の津軽海峡越えの正夢は、いつぞ叶うか。

 

 

2016年の集大成、残すは日本ハムだ。

 二年連続で甲子園の頂点に近づいたことは偶然の産物ではないはずだ。ヒルマン監督から始まり、梨田昌孝監督を経て、栗山英樹監督で大きく成長し続けるこのチームが持つ風土、気質は確実に北海道の高校野球に根付いている。

 

 いまの学生は賢い。時には札幌ドームにまで足を運び、毎回のように放映される中継を通じて、選手たちの、スタッフ達の背中を見て育っているのだ。

 

 

 そして2016年のパ・リーグは歴史に残る劇戦を迎えている。

 豊富な資金力と確実なデータの組み合わせで、再び最盛期を迎えたソフトバンクの牙城を崩す機運がやってきた。2013年から2015年はとにかく苦しかった。「対戦しても負ける」雰囲気に満ちていたあの時。友人達と見に行った試合でワンサイドゲームを見せつけられた時は僕にとっても苦い思い出だ。

 

2014年は捨て身の力を見せつけるも、届かなかった。三たび、王国の前に陽の光を見ることはなかった。

勝負する前からどうせ打たれる負けそうというコトほど希望のないものはない。

そうした積年の悔しさが、若い選手たちも持っているに違いない。

 

そして迎えた今季、日本ハムソフトバンクの一騎打ちとなった。夏前には11.5ゲームもの差をつけられ「今年もソフトバンクか?」と思われた。それがゲーム差なしまで奮闘した選手達は一ファンとしても、ただただすごいと思う。

北海道から出てもなお、本当にすごいチームだとみんなに吹聴している。世界一のチームだって。

 

あの10年前の戦士達は、もはや残すところわずか。あの時新人だった武田勝選手も、引退することが決まっている。どうせやるなら、優勝で見送れたらどんなに綺麗な幕引だろうか。

 

明日から2日間の、福岡決戦。

ただ「勝って」と願うのみ。

頼みます野球の神様、今年こそ、日本一の夜の夢を。

 

 

※【参照】

北海はなぜガッツポーズしないのか。甲子園では珍しいスタイルの「理由」。 - 高校野球 - Number Web - ナンバー

 

甲子園決勝に導く2年生捕手の判断力。北海・佐藤大雅の“2つのスパイス”。 - 高校野球 - Number Web - ナンバー

 

 

過去記事もいちおう参考に。

www.shingokataoka.com

www.shingokataoka.com

 

 

【追記:9/21】

大谷ー千賀の、今年最も調子のいいエース同士の対戦。

2回、レアードの2ランで 日本ハムが先制。2-0

5回、対抗してソフトバンク、本多のタイムリーで2-1に。

その後、日本ハムは大谷(8回)ーバース(0 1/3)ー谷元(0 2/3)で封じ、勝利を収めました。